2012年8月9日木曜日

3.6 朝礼による訓戒


  
会社の中には、始業の際に、社訓などを全員が声を出して読み上げる朝礼をしているところも多い。若い世代から敬遠される風景かもしれない。昭和的なやり方だという言葉を聴いたこともある。
しかし、ここには深い意図がある。会社とは、ある一定の考え方の基に、全社員が力を合わせて努力をし、収益を上げる組織体だ。それが会社というものであり、組織というものである。会社の方針の中には、自らの価値観とは相容れない部分もあることだと思う。
会社で働く人間は、金太郎飴になる必要があるなどとは当然ながら思わない。ただ顧客への対応方法について何を重視するのが会社の方針なのか。そうした意識統一は必要だ。
例えば、あくまでスピード重視する。顧客からのクレームがあった際には、即座の対応でまずは謝罪を述べる。顧客のオフィスへ即座に出向く。仮に社内の重要会議があろうとも、そうした対応を優先させる。クレームへの解決策がなくとも、まずは顧客の顔を見に行く。そうした文化を醸成させたい場合と、品質を重視する文化を定着させたい場合もあるだろう。顧客からのクレームに対しては、即座の対応はタブーとする。クレームがあった場合は、会社としての最初の対応が、顧客が持つブランドイメージに大きく影響を及ぼす。仮に1日対応が遅れたとしても、顧客が120%満足する対応策を準備してから、初めて顧客へとコンタクトを取る。
業界や商材によって、どちらの場合も正解となる場合もあるだろう。ビジネスとは最終的には、人と人との関わりである。人差し指でマウスを何度かクリックするだけで、お金を動かしているビジネスも存在することは存在するが、ほとんどすべてのビジネスは人と人との関わりによって成立している。どういう文化を根付かせるか、何を優先させるか、そうした対応を、各社員がいちいち考えなければならない状況では会社がうまく回らない。会社が望む対応を、各社員が知らず知らずの内に、行動を取るような、そうした状態になってこそ、初めて、組織力が磨かれる。
その意味で、始業の際の社訓の声出しは、非常に大きな影響を及ぼしている活動だと思う。社訓に書かれたことは会社が望む心のあり方である。それを毎朝社員に読み上げさせる。音読という行為は、言葉を読む行為や聞く行為に比べて遥かに頭の中に残る。心の中に残るものである。それを毎日繰り返すからこそ、徐々にではあるが、その言葉に秘められた心というものが、社員に染み込んでいくのである。
社員は知らず知らずの内に、自らの価値観を変えている場合もあるだろう。心を変えている場合もあるだろう。ヒンズーの教えにこういう言葉がある。「心が変われば、態度が変わる。態度が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる。」この言葉は、東北楽天ゴールデンイーグルス監督の野村克也さんや、ニューヨークヤンキースの松井秀喜さんも座右の銘としていつも心に刻んでいるそうである。
会社を変えたいときにすることは戦略を変えることではない。会社を変えたいならば、社員の心を変える必要がある。社員の心が変われば、社員の意識(態度)が変わる。意識が変われば、振る舞い(行動)が変わり。振る舞いが変われば、会社の文化が変わる。文化が変われば、組織(人格)が変わる。組織が変われば、業績(運命)が変わる。業績が変われば、人生(社会)を変えることができる。

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